日本人配偶者ビザ: 収入が少ない場合とその対策

日本人配偶者ビザの審査においては、最重要項目が2つあります。

それが、「結婚の信憑性」と「結婚後の生活基盤の有無 (経済面と思ってよい)」です。

今回の記事では、この2つの内とても重要な要件の一つである「生活基盤の有無」に直結する問題: 収入が少ないケース、そしてその対策について解説していきます。

年収の基準はいかほどか?

日本人配偶者ビザを申請する際に、「年収いくら以上あればよい」といった明確な基準値はありません。行政書士の先生方など専門家が参考値として述べているのはあくまでも目安として考えるべきです。

そして、その目安も諸説あり、大体「240万円〜300万円」が最低ラインと考えられています。単純に考えれば大卒初任給の手取り20万円の1年分 (+若干のボーナス) といったところでしょうか。

ただ、大切なポイントは「その世帯の実質的な状況 (お金の流れ) で生計が成り立ちそうか」というところ。この点が審査官に確認されると考えた方がよいでしょう。

つまり、その世帯において「入ってくるお金」と「出ていくお金」の差し引きを俯瞰して見たときに、このカップルの生活水準であれば生活基盤が安定していると考えられるか

この部分が非常に大切であり、総合的な財務状況を見て判断されることを念頭においておくと申請時に準備する書類なども理解しやすくなるでしょう。

「240万円〜300万円」が最低ライン (あくまで目安)

・カップルのキャッシュフローを総合的に見て生活基盤の有無を判断されると考える

少し極端な例をあげてみましょう。

  1. 年収は300万円弱であるが、安定した業績のある会社で正社員として勤続5年
  2. 2年目の個人事業主: 昨年1000万円以上の売上があったが、節税のため額面上所得を低くした

 

話を単純化するため、ここでは年収のみを考慮したとします。

もしあなたが審査官であれば、どちらの方に所得面の安定性を感じるかということですね。

前述したように、大切なのはお金の全体的な流れ(キャッシュフロー)なので、収入が大きくても支出として出ていっているお金が多ければ、ビザ申請の評価にはプラスにならないということです。(まさに②のケースはこの点で注意が必要です。)

一方で、①のケースのように正社員として勤務年数が長い方であれば、たとえ年収が目安の金額程度であっても、所得の部分において問題となる可能性は低いでしょう。

収入や所得はどのように証明するか

ここまで「キャッシュフローで見て、生計が成り立つことを示せているか」が大切ということを書いてきましたが、入管ではどのような書類に基づいてこの所得がチェックされるのでしょうか。

収入を証明する書類は「課税証明書」になります。具体的には、この課税証明書に記載されている所得金額。これが審査時に考慮される年収の値ですね。

つまりここの額面の最低ライン (あくまでも目安ですが) が「240万円〜300万円」であることをまずは確認しなければなりません。

では、この額面をチェックしてみて、「自分は所得が少ないな」という場合、何か打つ手立てはあるのでしょうか。ここからはその対策について記しておきます。

課税証明書の額面が少ない場合の対策は?

額面上の所得が少ないといっても、現状で結婚生活を営むことができているのであれば、何らかの方法でやりくりをしているはずです。それを書面などに起こして説明することになります。

いくつかよくあるケースを列挙してみます。

  • いずれかの両親から仕送りをもらっている
  • 生計が成り立つまでは両親の持ち家で一緒に暮らしている (家賃がいらない)
  • 今年就職したので課税証明書に反映されていない (去年の所得が載るため)
  • 個人事業主で確定申告の所得額が少ない

それぞれ見ていきます。

まずは両親など親族に協力してもらって生活の足しにしている場合です。

いずれかの両親に金銭面や住居で協力してもらっている場合

この場合は、協力者である両親などに身元保証人になってもらい、その協力者である方の納税状況や資産の状況を証明するという流れになります。

//身元保証人と一緒に用意する資料//

  • 身元保証書
  • 住民票(世帯が異なる場合)
  • 在職証明書
  • 課税証明書
  • 納税証明書
  • 残高証明書

このように追加で必要となる証明書類によって、生活が成り立っていることをアピールする形となるのです。

では、「両親の持ち家で一緒に暮らして家賃代を浮かせていますよ」という場合はどのような書類が必要だと想像しますか?

両親の持ち家で生活をしているならば、その両親の名前が入った建物登記簿謄本、それにプラスにして両親と一緒(4人以上)で生活しても問題ないスペースがあることをビジュアル的に示す住居の写真(外観から玄関・リビング・寝室などを含む内部)などがあれば、効果的に「家賃が発生していないので支出が少なく、生計の安定の要因になっていますよ」という点を証明することにつながるでしょう。

就職して間もないので課税証明書に現状が反映されていない場合

次に、就職したてで給与はあるものの、肝心な「課税証明書」にその所得が反映されないケースにはどう対処したらよいでしょう。

このケースであれば「在職証明書」「給与明細」「通帳の写し」などが、証明書類として必要になります。

また、「在籍証明書」に関しては、本来必須書類とされているものではありませんが、やはりその会社に在籍していることを客観的に示せる書類ですので、会社員の方はどのようなケースでも取得して提出するのがお勧めです。

そしてこれは正社員の方だけでなく、契約・派遣社員の方でも同様だと考えられます。

個人事業主で確定申告の所得額が少ない場合

最後に個人事業主の方にとって重要な内容です。

もともと事業が上手くいっておらず収入が少ないという場合には「まず収入を上げる努力をする」ということしかないのですが、よくあるパターンが、節税対策のために経費を多くした結果、額面上での所得が低いといったケースです。

配偶者ビザ申請における経済面の焦点は、「結婚後の生活基盤の有無」でしたね。だとすれば、所得を低く見せるのは審査上賢明でないというのは言うまでもありません。

自営業・個人事業主の方で配偶者ビザ取得を希望するのであれば、確定申告を正しくおこない、まずしっかりとした所得(売上ー経費)があることを示せるようにする、これが原則です。

そして、会社員とは提出書類が少し異なるのも何となく想像がつくかと思います。

以下にそれを記しておきます。

//自営業・個人事業主が別途用意する書類//

  • 確定申告書 (決算報告書)
  • 許認可 or 資格免状 (所持している場合)

– 必要に応じて

  • 事業計画書
  • 取引先との売買契約書
  • 預金通帳の写し (個人用/事業用ともに)

補足として、2つ目の「許認可」などは、例えばレストランであれば営業許可証など、営んでいる事業や収支の状況によって必要書類や追加書類の提出を考慮していきます。

考え方としては、やはり「実質的な状況 (キャッシュフロー) で生計が成り立ちそうか」が焦点となりますので、この面において自分が持ち合わせている書類を準備する心掛けが大切なのです。

おわりに

記事中再三に渡って述べてきましたが、日本人配偶者ビザの審査要件においての2大看板が「結婚の信憑性」と「安定した収入基盤」です。

このことだけで「収入が少ない」というのがどれだけ致命的な不許可要因になり得るということが分かっていただけるのではないでしょうか。

ただ、そのことによってあまり神経質になりすぎるのではなく、収入がしっかりとあればそのことをきちんと証明する書類を準備する少し額面で不安があればそれを補っている証拠をしっかりと準備して文章及び証拠書類で証明していく

この丁寧さが配偶者ビザの許可をもらう上で大切だと考えるとよいでしょう。

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