今回の記事では、外国籍の方が日本で仕事をするにあたって必要となる在留資格について、その全体像を解説していきます。
外国人の方が日本で就労するには、その就労活動に則した「就労ビザ」を申請することになるのですが、この活動を細かく分類していくと20種類近くなり、全体的な概要を掴むことが難しくなります。
そこで、この記事はあくまでも、まず「就労ビザ」の全体像を把握することに焦点を当て、
できる限りどの就労ビザにおいても当てはまるであろう共通項を抜き出すよう努めました。
こちらの記事を読んでいただき、「就労ビザ」の全体像把握に役立てて頂けると幸いです。
「就労ビザ」の代表例
それではここから「就労ビザ」と呼ばれる在留資格の代表例をいくつかご紹介していきます。就労ビザの種類と、実際の職種の例を照らし合わせて考えると、イメージを掴みやすいかと思います。
– 技術・人文知識・国際業務 (例:理工系技術者、IT技術者、外国語教師、通訳など)
– 技能 (例:外国料理の調理師、調教師、パイロット、スポーツ・トレーナー、ソムリエなど)
– 企業内転勤 (例:同一企業の日本支店(本店)に転勤する者など)
そして、同じように会社で働くと言っても、社長や役員には「経営・管理ビザ」、インターンシップで労働するならば特定活動ビザ (給与が出ない場合はまた別の区分となる)など、それぞれの職種に加えて、活動内容などでも与えられるビザは異なってきます。
– 経営・管理 (例:会社社長、役員など)
– 特定活動ビザ (インターンシップなど)
就労ビザにおいて審査上重要となるポイントとは?
・業務と大学での専攻及び職歴の関連性
・企業の経営状況
数多ある就労ビザの種類の中でも、外国人の方が日本で就労する際に取得するビザで特に多いのは、1番最初に挙げた「技術・人文知識・国際業務」となります。
前述した例としては、理工系技術者、IT技術者、外国語教師、通訳などを挙げていましたが、イメージとしては一般にホワイトカラーと呼ばれるオフィスでの仕事全般がこれにあたります。
「貿易事務」、「営業・マーケティング」などの業務もこの「技術・人文知識・国際業務」。
この種のビザの取得件数が多いのも、この滞在資格で包括される職種が多岐に渡るからと言えるでしょう。
では、就労ビザを取得するにあたっては、どのような点が重要視されるのでしょうか。
主に2つのポイントがあります。
- ビザを申請する外国人の方が担当することになる業務内容と、その申請者の学歴・職歴との関連性
- ビザ申請者の受入れ先である企業の経営状況
順番に見ていきましょう。
大学での専攻及びこれまでの職歴にしっかりとした関連性が認められるか
ここでは学歴と職歴を分けて、それぞれのケースで考えていきます。
まずは学歴と職務内容の関連性についてです。
□学歴とその企業で行う業務内容の関連性の要件とは?
具体例を挙げると、「IT関連のエンジニア」として就職しようという場合、学科であれば「システム情報学科」や「情報工学科」といった、理系かつシステムエンジニアと直結している学部や学科を専攻していると考えるのが普通でしょう。
これが業務内容と学歴の関連性についての考え方の原則です。
ただし、IT企業であっても職務内容が会計や経理、営業・マーケティングなどであれば、その職種との関連性のある文系の学部・学科の卒業証書で足りる場合もあります。
あくまで見るべきポイントは、従事することとなる職務と申請者の学歴であるということですね。
□職歴とその企業で行う業務内容の関連性の要件とは?
上記で挙げた学歴の要件を満たさない場合は、就労ビザ申請者のこれまでの職務経験を証明することによって就労ビザの取得の可能性が出てきます。
では、どのくらいの実務経験が要求されるのでしょうか?
「技術・人文知識・国際業務」での就労ビザを申請する際の実務経験の年数は一部の職種を除いて満10年間が要求されます。
つまり、その外国人の方の受け入れ先企業での職種と関連のある業務(海外での就労経験など)において、10年間の実務経験がなければこの就労ビザの申請要件は満たされないのです。
なお、例外として「通訳・翻訳、語学講師」の場合にはこの実務経験が3年で足りるという職種がありますが、基本的にはほとんどの職種において関連する分野での実務経験が10年必要であると考えておく必要があるでしょう。
□ビザ申請者の受入れ先である企業の経営状況
就労ビザの申請をしようと思ったら、雇い入れてもらうこととなる企業の協力が必要不可欠となります。
その際、審査で考慮されるのが、雇い入れる企業の経営状況です。
これは、直近年度の決算報告書 (貸借対照表及び、損益計算書)と、給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」を提出して証明することになります。
大前提として受け入れ先となる企業の安定性を証明できなければならないということですね。
そして、提出が必要とされる書類の種類は会社の規模によって異なってきますので、以下にそれを完結に説明しておきます。
□企業側が準備すべき書類は企業規模によっても異なる!
4つにカテゴリー分けされている企業の規模
- カテゴリー1: 上場会社
- カテゴリー2: 未上場の大規模会社
- カテゴリー3: 中堅・中小企業 (設立2年目以降)
- カテゴリー4: 設立したての会社
想像はつくかと思いますが、カテゴリー1や2の大きな会社であれば、提出書類は簡略化されておりカテゴリー3や4の企業に比べて少なくて済みます。
ただし、これは「申請可能の基準を最低限満たす」、よって「受理はされる」ということを意味しているに過ぎませんので、提出書類が少ないことで生じる「追加書類の要請を受けるのを避ける」ことや、「余計な審査の時間を省く」という目線で考えたとき、少なくともカテゴリー3規模の企業で提出が必要とされる書類を集めることが賢明であると言えるでしょう。
就労ビザ「技術・人文知識・国際業務」の提出書類まとめ
では、ここまでの内容を一旦整理して、どのような書類で上記を証明していくかという観点でビザ申請を考えてみます。
(なお、企業側が用意する書類に関しては、前述の理由からカテゴリー3の企業が要求される書類を列挙しています。)
共通して必要な書類は以下の通りです。
【申請者 (外国人の方が用意する書類)】
・証明写真 (4cm×3)
・大学または、専門学校の卒業証書
・大学または、専門学校の成績証明書
・出席状況証明書
・パスポートのコピー
・在留カードのコピー
・履歴書 (学歴・職歴)
・その他あれば審査でプラスに働く書類
– 日本語能力を証明する証書
– 職務と関連のある資格の証書
【雇用主 (企業側が用意する書類)】
・在留資格申請書 (新規交付/変更許可)の2パターンあり)
・申請理由書
・登記簿謄本
・決算書/決算報告書
・前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表のコピー
・雇用契約書
・採用内定通知書
・労働条件通知書
・会社案内及び会社パンフレット
・補足説明書 (必要に応じて)
外国人人材を雇用するに当たっての法的責任について
最後に、外国人人材を雇用するに当たっての法的責任について、つまりは「注意事項及び罰則」について触れておきます。
外国人人材を雇用するに当たっての法的責任は、外国人の方・本人及び、雇い主である企業にも生じますので注意が必要です。
就労ビザ =「活動が縛られるという」意味とは
就労ビザなど活動系のビザは、定められた活動を行うことを前提に日本での滞在許可が特別に与えられているという性質のものです。
となると、「在留資格に定められた活動をしていない場合、あるいは本来の活動以外の活動を行っていた場合」には、不法就労に当たり、一定期間以内に出国を余儀なくされたり、最悪の場合、”退去強制”と呼ばれる処分の対象にもなり得ます。
さらに、「出国を指示されているにもかかわらず従わない」などと事が重大であれば、3年以下の懲役もしくは禁錮、300万円以下の罰金などが与えられることにもなりかねません。
申請者となる方はこのあたりのルールを肝に銘じておく必要がありますね。
では、雇い主となる企業側への罰則はどうでしょうか?
主には2つのケースが考えられます。
一つは、「資格外活動を行わせた」というケース、もう一つは「オーバーステイ (在留期間を過ぎているのに日本に滞在している)」の外国人を雇って働かせているケースです。
オーバーステイの人材の雇用については、在留カードの期限を参照する等で簡単に防ぐことができるはずですので詳細は省きます。
一方で、企業が特に気を配るべきは、不注意にせよ「資格外活動」を行わせないことの方です。
例えば、「技術・人文知識・国際業務」であれば本来の業務はオフィスワークとなっており、工場のラインマンやホテルの受付といった単純労働はこのビザに当たりません。
単純労働を許可する種のビザはそもそもないのです。
そのような不法就労に当たる状況下で外国人人材を業務に就かせている場合、企業は「不労就労助長罪」として3年以下の懲役、または300万円以下の罰金に処せられる可能性が出てきます。
企業側も知らなかったでは済まされない場合がありますので、しっかりと前のめりにビザの管理を行なっていくという心構えが大切と言えるでしょう。
まとめ
今回は、就労ビザと言われる外国籍の方が日本で就労する際に申請することとなる在留資格について解説しました。
就労ビザを申請するにあたって特に注意すべきポイントを改めて以下にまとめておきます。
- 外国籍人材が行うこととなる業務内容と大学での専攻や職歴の関連性がきちんと証明できるか
- 企業の経営状況が安定したものであると証明できるか
- 行う業務内容が「資格外活動」にあたらないかは念入りに調査する
このように就労ビザを得ようと思ったら、就労先となる企業の協力は不可欠となります。
スムーズな申請手続きを行いたい場合は、申請者側と企業側がお互いに準備する必要のある書類 (疎明資料)をきちんと認識した上で、期間的にも余裕を持った上で計画的に準備を進めるとよいでしょう。