就労ビザ: 「企業内転勤」と「技術・人文知識・国際業務」の比較について

就労ビザの種類の一つとして「企業内転勤」というものを紹介しておきたいと思います。

<企業内転勤ビザとは?>

企業内転勤ビザは、親会社と子会社間での異動をイメージすると分かりやすいでしょう。

・実力のある即戦力人材を海外の支店や営業所から日本の事務所へ呼び寄せたい。
・海外での拠点拡大に伴い、一定期間現地の人材を呼び寄せて日本企業で経験を積ませたい。

理由は色々と考えられますが、業務内容が「技術・人文知識・国際業務 (技・人・国)」に当てはまる場合は、企業内転勤ビザを取得することで、申請者が日本で業務を行うことを実現できる可能性があります。

「企業内転勤」は、「技術・人文知識・国際業務」の代わりとして取得するべきかを考える必要がある在留資格であると言えます。

それぞれの特徴を比較して考えてみましょう。

まず、在留資格のうち、外国人の方が会社員として日本にある企業で働く、または会社を経営するといった場合には就労ビザを申請するのですが、一般にホワイトカラーと呼ばれるオフィスでの業務に就く場合、申請者は「技術・人文知識・国際業務」という在留資格の取得を試みることになります。

その際に最重要となってくるのが、申請者本人の経歴に関する要件です。

これには、学歴と職歴の2パターンがあります。
極論、「学歴」であれば就職先の企業で従事することとなる業務と大学での専攻科目が直結していること、「職歴」は満10年が要求されます (1部職種において3年間で良いという緩和あり)。

そしてこれにプラスして、企業自体の経営状況が健全であることなどが要件として加わってくるのですが、何はともあれ本人自身がこれから行う業務にしっかりとした関連性のある学歴・職歴を持っていなければ元も子もないという見方ができるわけです。

以上が「技術・人文知識・国際業務」のビザの大きな特徴と言えますね。


ここからが、本記事の本題「企業内転勤」です。

基本的には海外に拠点を持つような一定規模の企業に限られるという前提ではありますが、「企業内転勤」は、就労ビザ (「技術・人文知識・国際業務」)の要件である、学歴・職歴に縛られないという点に大きな特徴があります。

以下、「技術・人文知識・国際業務」、「企業内転勤」で求められる経歴の要件を比較します。

【「技術・人文知識・国際業務」の経歴要件】
「学歴」・・・就職先の企業で従事することとなる業務と大学での専攻科目に関連性があること
「職歴」・・・満10年

【「企業内転勤」の経歴要件】
「直近1年間以上に渡って海外にある本店や支店で勤務していること。」のみ

ご覧のように、企業内転勤ビザの要件とは、「直近1年間以上に渡って海外にある本店や支店で勤務していること。」

これに集約されており、とてもシンプルです。

つまり学歴や就業経験の要件がない分、申請者にとって日本で就労できることの条件が緩和されていると考えることができるかと思います。

つまり、企業目線で考えると海外の本社や支店で1年の勤務期間を経過している人材がいれば、その方を日本へ呼ぶことを検討できる、という訳ですね。

特にボーダーレスに事業を展開している企業にとっては、人材の行き来を活性化できることには利点があると言えそうです。

しかし、その代わりとして、通常の「技・人・国」のビザ申請よりも入管へ摘出しなければいけない必要書類は多くなります。

「企業内転勤」のビザ申請時に必要な書類

「企業内転勤」のビザ申請を行う時に提出すべき書類の考え方は、通常の「技・人・国」で必要とされる書類に加えて、日本に存在する企業と海外の本社や支店との関係性を証明する書類が必要になってくるという考え方になります。

以下、その必要書類をあげておきます。

通常の「技・人・国」で必要とされる書類

【申請者 (外国人の方が用意する書類)】
・証明写真 (4cm×3)
・大学または、専門学校の卒業証書
・大学または、専門学校の成績証明書
・出席状況証明書
・パスポートのコピー
・在留カードのコピー
・履歴書 (学歴・職歴)
・その他あれば審査でプラスに働く書類
– 日本語能力を証明する証書
– 職務と関連のある資格の証書

【雇用主 (企業側が用意する書類)】

・在留資格申請書 (新規交付)
・申請理由書
・登記簿謄本
・決算書/決算報告書
・前年分の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表のコピー
・雇用契約書
・採用内定通知書
・労働条件通知書
・会社案内及び会社パンフレット
・補足説明書 (必要に応じて)

+プラスして必要となる書類

【企業内転勤ビザ – 雇用主の準備書類 (企業側が追加で用意する書類)】

・過去1年間に従事した業務内容及び地位、報酬を明示した転勤の直前に勤務した外国の機関の証明書
・転勤命令書または辞令のコピー
・日本法人と外国法人の資本関係を証明する書類
– 外国法人の支店の登記事項証明書
– 日本法人の登記事項証明書
– 定款のコピー
- 株主名簿など

企業内転勤ビザで必要とされる書類を見ると、大きく3つの部分を証明する必要があることがわかります。

  • 直近1年間以上に渡って海外にある本店や支店で勤務していることが証明できる書類
  • きちんと辞令が言い渡されていることを証明する書類
  • 日本法人と外国法人の資本関係を証明する書類

終わりに

考慮すべきポイントとしては、「技術・人文知識・国際業務」と「企業内転勤」のどちらの方が説得力の高い申請になるか、であったり、きちんと資料を集められるかといった点が重要になってくるでしょう。

例えば、実際には海外からの転勤で日本で仕事を始めることになった場合、「企業内転勤」でのビザ取得を考えることはできますが、そもそも本人の学歴や職歴がしっかりと日本の業務にマッチしている場合は「技術・人文知識・国際業務」で申請することも十分に検討すべきです。

それによって、余分な資料の提出や証明事項を省くことができますし、学歴などが十分以上に要件を満たしている場合は、「技術・人文知識・国際業務」の方が申請書類の説得力が増すことも考えられる訳ですね。

また、企業内転勤ビザの経歴の要件は「直近1年間以上に渡って海外にある本店や支店で勤務していることのみ。」とご紹介していますが、もちろん関連した学歴や職歴を持っているに越したことはないですし、この点も審査官からは評価されることになります。

以上の内容を総合的に判断し、ご自身の状況に見合った申請を行うことで、効率的なビザの取得につなげることができるでしょう。

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